前2回(→第1話はこちら →第2話はこちら)に続き、
組織づくりの失敗話について書かせて頂きます。
自己チューな小学生が、なんの興味もない子供たちを
強引に引き込み、野球チームを立ち上げた実話…
今回で、完結となります。
グダグダに終わった初練習-
今思えば、その原因は、
“チームに「共通目的」が存在しなかったこと”でした。
あったのは一個人の熱い想いのみ。
唐突かつ一方的に示された目的に、共感する者などいません。
しかし、小4の私はそんなことには気づきませんでした。
(やる気がないのは、野球の楽しさを知らないからだ。
野球の楽しさに気付けば、皆やる気を出して盛り上がるはず)
(万一、野球が面白いと思えなかったとしても、
何か面白いことや得することがあれば、
皆喜んで練習に参加するだろう)
第2回目の練習を前に、そんなことを考えていました。
練習2日目-
覚悟はしていたものの、参加者は1日目からほぼ半減。
(でも、楽しくやっているのを見れば、参加する子も増えるはず)
気を取り直して、まずはキャッチボールから始めます。
この日のキャッチボールは、
ゴムボールを使用し、超近距離で行うことにしました。
少しずつボールとお友達になる(どこかで聞いたような…)作戦です。
そして初日の反省を基に、皆が飽きる前に練習メニューを切り替えます。
お次はバッティング練習です。
守る、走る、といったことよりも、子供は「打つ」方が断然好きなのを
私はわかっていました。
しかも、ヒットを打てば出塁できる実践形式にしたので、
私が打ちやすい球を投げ…
→皆がバンバン打って出塁 →点が入る →わーい!楽しい!
こんな風に、展開する予定でした。
ところが…。
打ちやすいポイントへ、ゆる~い球を投げても、
バットに当てられない子がほとんど、という有様でした。
やっと「打った!」かと思うと、3塁に向けて走り出す。
(ドカベンの殿馬も、最初はそうでしたが…)
空振りの仕方が面白い、逆走しちゃって面白い、など
笑いが起きる場面もあり、楽しめる要素が無くもなかった。
しかし、”野球の楽しさを知り、やる気が出る”状態には程遠く、
“このチームを強くするために、がんばる”といった
「貢献意欲」を持ったメンバーが現れる可能性は、
限りなくゼロに近い状況でした。
私は、現実の厳しさに打ちのめされそうになりながらも、
最後の力を振り絞って「明日も来ると、いいことがあるからね!」
と2日目の練習を締めくくりました。
練習3日目-
この日は、苦肉の策として「参加すれば得する作戦」に出ました。
お菓子と手作りスタンプカードを用意して空地で待っていると、
やって来たのは(確か)小さな子3人。
練習に来たというよりも、たまたま通り掛かり
思い出して近寄って来た風でした。
「これ、何~?何~?」
ちびっ子たちの視線は、のっけからお菓子とスタンプカードに釘付けです。
よしよし…。
「練習に来たら1個スタンプが押せるよ。まず、今日の分を押そうね」
私はちびっ子たちに1枚ずつスタンプカードを手渡しました。
手渡したが最後、すべてのマスがあっという間にスタンプで埋め尽くされました。
ちびっ子たちは、スタンプネタでふざけ合った後、
「お菓子、食べたい」と言い出しました。
「練習をして、休憩の時に食べようね」と言っても聞きません。
「今、食べたい!今、食べたい!」
しょうがないので、お菓子を食べてから練習開始ということにしました。
内心はイラッとしていたものの「メンバー様は神様」です。
融通を効かせなければ、一歩も前に進みません。
さて、ようやくお菓子をつまむ手が止まったので、練習を始めようと促しましたが、
ちびっ子たちは全く動こうとしませんでした。
「むずかしいから、できない」
「食べてすぐ動くと、おなかが痛くなる」
「もっと、おもしろいことして遊びたい」
やっぱり彼らは、最初から練習に参加する気などなかったのです。
私の熱い想いは届かず、(一応の)戦略も懸命の努力も虚しく。
こうして、立上げからたった3日でチームは解散(自然消滅?)となりました。
昨今「ブラック企業」といわれる組織にも似た、完全にアウトな野球団は、
組織の成立要件である「共通目的」や「貢献意欲」を見出せぬまま、
「コミュニケーション」も最後まで上手く取れぬまま、終わったのです。
さて、この失敗を「所詮は小学生のやることだよなぁ」と
一笑に付すことができるでしょうか?
もしかしたら、大人が作った組織でも似たような場面はありませんか?
ヒト・モノ・カネ・コネにも恵まれない状況で
小組織を立上げ、まとめ、目的達成へと導くには、どうすればよいか。
この問いに明確に答えることができる方ならば、
中小企業の組織づくり・組織運営も上手くできそうですね。