先日、近々野菜作りを始めるという知人の話をきっかけに、
「その野菜を高く売れるビジネスモデルを何か作らなきゃね~」
なんて会話をしていて、遠い昔の話を思い出しました。
それは、何十年も前、私が4~5歳の頃の話です。
当時いろいろと事情もあり、私は保育園や幼稚園には預けられず、
日々の大半を母が勤めていた「青果市場」で過ごしていました。
早朝(おそらく3時半ぐらい)に家を出て、徒歩で市場へ向かいます。
母は、餅及び和菓子製造卸の会社に勤めていて、
その出店がこの市場内にありました。
(お客さんは、主に八百屋や小さな街の商店のおじさんたち)
店に着くと母は当然仕事に入りますが、
私はまだまだ眠い時間帯なので、
餅や饅頭の陳列棚に使われているひな壇型のスチール棚の裏で、
毛布に包まってもう一寝入りします。
棚の裏側の底部分に段ボールをいくつか重ねて作った、
私専用の簡易ベッド?があるというわけです。
そして朝7時頃、目が覚めると市場内の食堂へ行って、
おじさんたちに交じって丼めしとサバ味噌なんかを食べます。
(料金はツケで後払い)
お腹が満たされたら、特にあとはやることもなく、フリーダムです。
・ただひたすら市場内をぐるぐる走り回る。
・おじさんたちの休憩所でごろごろする。
・段ボールで何かを作って遊ぶか本を読む。
兎に角、毎日が自由というか…暇でした。
さて、こんな暇でしょうがない幼児だった私は、
ある日、次のような光景に出くわしました。
この市場内には当時、
運送途中や荷卸しの際に傷がついた野菜等を捨てる
ゴミ捨て場があったのですが、
そこで腰の曲がった婆さんが、一生懸命野菜を拾っているのです。
「ゴミ捨て場の野菜を食べないと暮らしていけないのか。
こんなお年寄りなのに、かわいそうだなぁ」
そんな風なことを思いながら、
この私からすれば珍しい目撃情報を
母のところへ走って行って伝えました。
すると母は鼻で笑って、こう説明してくれたのです。
※会話詳細はだいたいの記憶です
「あ~、その婆さんね。かわいそうだなんてとんでもない!
あそこで拾った野菜の使えるところだけを切り取って、
リヤカーで“私が作った・産地直送だよ”って、近所を売り歩いてんのよ」
「ええーー!?」
「結構みんな知らずにかわいそうだと思って買うんだって」
「ええーー!?」
子ども心にも、ばあさんの商魂にビックリしたものです。
・仕入れコストは0円。
・近所の主婦のニーズにもマッチ。
(無農薬、ばあさんの手作り、産直、便利な訪問販売)
・今どきでいえばエコでもある(再利用)。
偽装があるということを除けば、
なかなかビジネスモデルですよね。
以上、たくましい昭和のばあさんの昔話でした。